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量子センサのスタートアップと日本の取組|Q-LEAP・QIH【連載第11回】

Quantum Plus 編集部
Quantum Plus 編集部 量子技術専門メディア

前回(第10回)で、量子センシングが応用先の広い技術であり、日本が特許で世界2位の強みを持つことを確認しました。今回は、その強みを支える日本の取組に踏み込みます。内閣府資料は、研究ファンディングや拠点整備、具体的な実証事例、そして相次いで設立されるスタートアップを示しています。量子センシングがどこで育てられ、どこに転職先が生まれているのかを整理します。

※本連載は内閣府「量子エコシステム構築に向けた推進方策」(R8.1.30 資料4)を参考情報として読み解くものです。事実部分の出典は同資料に拠ります。

研究ファンディングと拠点が、量子センサを育てている

量子センシングの研究開発は、複数の国の枠組みで支えられています。資料は、Q-LEAP、Kプログラム、SIP、戦略創造などの研究ファンディングで量子センサの研究開発を支援していると述べています。基礎研究から実用化に向けた取組まで、層の厚い資金的な裏づけがある分野です。

拠点も整備されています。量子技術イノベーション拠点(QIH)において、東京科学大学および量子科学技術研究開発機構(QST)などが、量子センシングに関する拠点として活動しています。研究を担う場と、それを支える資金。この2つがそろっていることが、日本の量子センサの底力を形づくっています。

脳磁計測とEV電池モニタ、実証は実用の手前まで来ている

取組は基礎研究にとどまりません。資料は、Q-LEAPにおける具体的な実証として、ダイヤモンドNVセンサの高感度化による低侵襲な脳磁計測や、電気自動車の電池モニタリングへの実施検証を挙げています。

脳磁計測は、脳が発する微弱な磁場をとらえる技術で、医療への応用が期待されます。EV電池モニタリングでは、電池モジュールの電流をダイヤモンド量子センサで計測する小型プロトタイプが示されています。電池セルやバスバーに近接してマイクロ波とダイヤモンド量子センサを組み合わせる構成で、自動車という巨大産業の現場に量子センサが入り込もうとしている事例です。医療と自動車という、いずれも市場の大きい分野で実証が進んでいる点は、産業化の現実味を示しています。

大学発のスタートアップが相次いで生まれている

資料は、日本においても量子センサ関連スタートアップが設立されつつあると述べ、具体的な企業を挙げています。いずれも大学・研究機関を出自とする点が特徴です。

企業設立出自
SpinSensingFactory2018年東北大学発
Quantum Zero2022年東京科学大学発
Type-I Technologies2025年QST発

2018年、2022年、2025年と、設立年が段階的に並んでいることが分かります。量子センサ領域でのスタートアップ設立が、単発ではなく継続的な流れになっていることを示しています。これらは大学や研究機関の研究成果を事業に転換する形で生まれており、出自となる研究拠点の専門性と結びついています。

計測・材料・医療・自動車の経験が接続する

ここからは、当社が量子・DeepTech領域の求人を扱う立場からの観察を加えます。量子センシングの取組を見ると、関わり方の入り口が研究機関と企業の両方にあることが分かります。

Q-LEAPやSIP、QIH拠点といった枠組みは、研究機関やアカデミアでのキャリアと結びつきます。一方、脳磁計測やEV電池モニタといった実証は、医療機器や自動車・電池といった応用産業のドメイン知識を持つ人材との接点を生みます。大学発スタートアップは、計測技術・材料・物理の専門性を事業に転換する場であり、研究と事業の橋渡しができる人を必要とします。量子センサは、量子そのものの専門家に加え、応用先の産業を理解する人材が活きやすい領域です。第10回で触れた「ニーズとシーズのマッチング」という課題は、ここでも人材ニーズとして表れています。

よくある質問(FAQ)

量子センサの研究はどのように支援されていますか?

Q-LEAP、Kプログラム、SIP、戦略創造などの研究ファンディングで支援されています。また、量子技術イノベーション拠点(QIH)において、東京科学大学やQSTなどが量子センシングの拠点として活動しています。

量子センサはどんな実証が進んでいますか?

ダイヤモンドNVセンサの高感度化による低侵襲な脳磁計測や、電気自動車の電池モニタリングへの実施検証が進んでいます。医療と自動車という市場の大きい分野で、実用に近い検証が行われています。

日本の量子センサスタートアップにはどんな企業がありますか?

東北大学発のSpinSensingFactory(2018年)、東京科学大学発のQuantum Zero(2022年)、QST発のType-I Technologies(2025年)などがあり、いずれも大学・研究機関の成果を事業化しています。

まとめ

量子センシングは、Q-LEAPやSIPなどの研究ファンディングとQIH拠点に支えられ、脳磁計測やEV電池モニタといった実用に近い実証が進んでいます。SpinSensingFactory、Quantum Zero、Type-I Technologiesと、大学発スタートアップも継続的に生まれています。研究機関でのキャリアに加え、医療・自動車などの応用産業のドメイン知識を持つ人材にとっても、量子センシングは接点を見つけやすい分野です。

次回はいよいよ最終回です。これまで見てきた量子コンピュータ・量子通信・量子センシングを束ね、国家戦略が描く「勝ち筋」と、AI・半導体・防衛との連動、そして全体を貫く人材という論点を読み解きます。

出典・引用元

内閣府「量子エコシステム構築に向けた推進方策」(量子技術イノベーション会議 R7.5.30/内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局 資料4 R8.1.30)

内閣府 > 内閣府共通検索 | 検索キーワード:量子エコシステム

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