量子コンピュータの足音が着実に近づく中、既存の暗号技術の安全性を揺るがす未来のリスクへの対策がグローバルで急ピッチに進んでいます。
株式会社サイバーセキュリティクラウド(以下、CSC)は、将来的な量子コンピュータの実用化を見据え、耐量子計算機暗号(Post-Quantum Cryptography、以下「PQC」)への対応に向けた技術検証を開始したことを発表しました。
同社が提供する主力サービスであるクラウド型WAF「攻撃遮断くん」におけるPQC対応の実現を目指し、次世代のWebセキュリティ環境構築に乗り出しています。
なぜ今「PQC(耐量子計算機暗号)」への対応が求められるのか?
現在、インターネット上の多くのWebサービスや通信(SSL/TLSなど)では、「公開鍵暗号」という仕組みが安全性を支えています。しかし、大規模な量子コンピュータが実用化されると、こうした従来の暗号が非常に高速に解読されてしまう可能性が指摘されています。
この将来的なリスクに対処するため、量子コンピュータによる強力な計算能力を持っても解読が困難なよう設計された暗号が「PQC(Post-Quantum Cryptography)」です。
世界・国内で加速するPQC移行の動き
PQCへの移行は単なる技術的なトレンドにとどまらず、国内外の規制やガイドラインのレベルで標準化が進んでいます。
- 米国(NIST):2024年8月、PQCに関する初の標準規格(FIPS 203、FIPS 204、FIPS 205)を正式に公開し、各組織への移行開始を推奨。
- G7サイバーセキュリティ・ワーキング・グループ:2026年、PQC移行準備に関するステートメントを公表。経営層の関与や「暗号資産の棚卸し」の重要性を強調。
- 日本国内(金融庁):2024年に「預金取扱金融機関の耐量子計算機暗号への対応に関する検討会」を設置し、報告書をまとめて対策を議論。
こうした急激な世界情勢の変化を受け、セキュリティベンダー側にもいち早い対応と技術的知見の蓄積が求められているのが現状です。
サイバーセキュリティクラウドにおける技術検証の具体像
CSCでは、Webサービスを守るセキュリティ事業者として、将来にわたって安全なWeb環境を提供し続けるために以下の検証に着手しました。
今回の検証では、PQCを活用したWeb通信における技術要件を整理するとともに、既存環境との互換性や通信速度への影響などを総合的に評価します。
主な検証項目
- PQ/Tハイブリッド鍵合意方式の検証:RFC 10024に定義される最新の鍵合意方式に関する技術検証
- 互換性の確認:既存のWeb環境や主要ブラウザ等との互換性評価
- 通信パフォーマンスの検証:通信性能やレスポンス速度への影響確認
- サービス実装への課題整理:自社セキュリティサービスへ適用する際の技術要件と課題抽出
「攻撃遮断くん」の耐量子化へ向けた展望
同社は今回の検証で得られた知見を活用し、まずは国内トップシェア級のクラウド型WAF「攻撃遮断くん」でのPQC対応実現を目指します。
「攻撃遮断くん」は、ユーザーとWebサーバー間の通信を監視・保護するセキュリティサービスです。今後PQCへの移行が進む中で、暗号化通信の安全性を確保しながらWebアプリケーションを脅威から守り続けるインフラとして進化を遂げていくことが期待されます。
正式な提供時期やサービス内容は決定次第追って発表される予定です。Webサイトを運営する事業者にとっても、「量子コンピュータ時代におけるセキュリティ」への準備はいよいよ現実的なフェーズに入ったと言えるでしょう。