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シャープと豊田自動織機、疑似量子アニーリングで自動倉庫の出庫計画時間を「約5分の1」に短縮——大規模物流のDXを支える基盤技術を共同確立

Quantum Plus 編集部
Quantum Plus 編集部 量子技術専門メディア

EC(電子商取引)の急拡大に伴い物流センターの大型化が進む一方、深刻な人手不足への対応として自動倉庫や搬送ロボットの導入が急ピッチで進んでいます。しかし、多台数の機器を最適に動かすための「搬送・出庫計画」の計算には莫大な時間がかかるという大きな課題が存在していました。

こうした中、シャープ株式会社株式会社豊田自動織機は、疑似量子アニーリング(Simulated Quantum Annealing:SQA)技術を活用し、自動倉庫における最適な出庫計画を高速で算出する基盤技術および計算モデルを共同で確立したと発表しました(両社共同で特許出願中)。

1日10万個以上の荷物を扱う大規模物流センターを想定した検証において、従来の計算手法と比較して計画算出にかかる計算時間を約5分の1に短縮することに成功。技術の社会実装に向けた大きな一歩となります。


背景:大規模物流センターを悩ませる「組み合わせ爆発」の壁

近年の物流現場では、作業の自動化・省人化に向けて自動運転フォークリフトや自動倉庫、高速仕分けシステムなどの導入が進んでいます。しかし、これらを効率的に稼働させるには、以下のような多様かつ複雑な制約条件をクリアしなければなりません。

  • 倉庫設備の処理能力(コンベヤやマテハン機器のボトルネック)
  • 品物ごとの出荷期限や優先度
  • 搬送ロボットやフォークリフトの最適な移動経路
  • 倉庫内における適切な在庫の配置バランス

考慮すべき条件が増えるほど選択肢の組み合わせは爆発的に増加し、汎用コンピュータを用いた従来のアルゴリズムでは計算処理に膨大な時間がかかっていました。これが結果として作業者の待ち時間や機器の滞留を引き起こし、現場の最適化を阻むボトルネックとなっていたのです。


共同開発の強み:シャープのSQA技術 × 豊田自動織機の物流ノウハウ

今回の成果は、先進的な計算アルゴリズム技術を持つシャープと、物流ソリューションのリーディングカンパニーである豊田自動織機の強みが融合したことで実現しました。

企業名本取り組みにおける役割・強み
シャープ株式会社汎用コンピュータ上で組合せ最適化問題を高速処理する「疑似量子アニーリング(SQA)技術」の開発。多台数ロボット制御や経路最適化で培ったアルゴリズム知見を提供。
豊田自動織機自動倉庫、自動運転フォークリフト、仕分けシステム等のハードウェア・ソフトウェアを含む総合物流ソリューションの現場ノウハウと実証環境を提供。

※本成果は、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業によって得られたものです。


技術のポイント:現場の複雑な制約を数値化・重み付けしてモデル化

検証にあたり両社は、取り扱い荷量が1日10万個以上におよぶ大規模物流センターの環境をモデル化しました。

  1. 複雑な現場条件の総合評価手法を考案:設備能力や出荷期限など、出庫経路の決定に影響する各条件を数値化し、重要度に応じた「重み付け」を行うことで多角的に評価。
  2. SQA向け計算モデルの構築:定式化した複雑な制約条件を疑似量子アニーリングで高速処理可能な計算モデルへと落とし込みました。

この結果、従来の計算手法と同じ条件下で比較した際、出庫計画の算出時間を約5分の1に短縮できることが実証されました。


今後の展望:入出庫・在庫配置を含めたトータル最適化へ

出庫計画の算出速度が向上することで、現場では作業者の無駄な待ち時間が削減され、搬送の整流化や設備稼働率の向上が期待されます。

さらに今回の検証を通じて、出庫計画のみならず「入庫計画」や「在庫配置」といった複数の要素が絡み合う、より大規模かつ高度な条件下においても、SQA技術を用いれば高速に最適解を導き出せる見通しが得られました。

両社は今後、実際の運用環境における技術検証を進めるとともに、社会実装と適用領域の拡大を目指していくとしています。


編集部のひとこと

量子コンピューティングや疑似量子(イジングマシン)技術の産業応用において、「物流・サプライチェーンの最適化」は最も期待されている分野の一つです。今回のシャープと豊田自動織機による取り組みは、単なる基礎研究にとどまらず、1日10万個という実運用のスケール感で計算時間を5分の1に削り落とした点に大きな意義があります。

実社会の「物流2024年問題」や労働力不足に対する現実的な解答として、SQA技術の社会実装が今後どこまで加速していくのか、引き続き注視していきます。

出典:PR TIMES プレスリリース(2026年9月4日配信)

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