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量子センシングとは?5つの分類と応用先・日本の強みを解説【連載第10回】

Quantum Plus 編集部
Quantum Plus 編集部 量子技術専門メディア

量子技術の3本目の柱が、量子センシングです。量子コンピュータほど話題になりませんが、応用先が実用に近く、すでに社会実装に達している技術もあります。内閣府資料は、量子センサが従来技術より高い感度や精度を実現できると整理し、5つの分類を示しています。連載第10回では、その分類と成熟度、そして日本の立ち位置を読み解きます。素材・計測に強い日本にとって、ここは相性のよい領域です。

※本連載は内閣府「量子エコシステム構築に向けた推進方策」(R8.1.30 資料4)を参考情報として読み解くものです。事実部分の出典は同資料に拠ります。

量子センサは、従来技術より高い感度・精度をねらう

量子センシングは、量子の性質を使って、これまで測れなかったものや、測りにくかったものを高感度・高精度で計測する技術です。資料は、固体量子センサ(ダイヤモンドNVセンター等)による世界最高の磁場感度の達成や、世界初の可搬型光格子時計の開発、「室温超偏極」を用いた従来比700倍以上の感度のMRIなど、優れた研究成果が生まれていると紹介しています。

注目すべきは、研究にとどまらず産業化が動き出している点です。固体量子センサや光格子時計の一部は、電気自動車の電池モニタリングなど、企業との共同開発へと進展しています。資料は、産業化に向けた取組が着実に進行中であり、スタートアップも設立されつつあると述べています。

5つの分類で、応用先と必要環境が分かれる

量子センサは一様ではありません。資料は、計測する物性や用いる量子系、動作環境によって5つに分類しています。

分類主に測るもの動作環境主な応用先
ダイヤモンドNV中心温度・磁場など常温・常圧医療、バイオ、デバイスモニタ
量子慣性センサ加速度・角加速度極低温・超高真空測位、計測標準、資源探査、地震計測
光格子時計時間極低温・超高真空時間標準
量子もつれ光3次元空間位置常温・常圧化学分析、バイオ、医療
超偏極MRI3次元空間位置極低温・超高真空医療

常温・常圧で動く方式(ダイヤモンドNV中心、量子もつれ光)は実用化のハードルが比較的低く、極低温・超高真空を要する方式は研究色が濃くなります。応用先も、医療・バイオから測位・資源探査、時間標準まで多岐にわたります。量子コンピュータが「計算」という単一目的に向かうのに対し、量子センシングは用途ごとに技術が枝分かれしているのが特徴です。

成熟度(TRL)は分野ごとに大きく異なる

同じ量子センサでも、社会実装までの距離は技術によって大きく違います。資料は技術成熟度(TRL)を用いて、この差を示しています。磁気センサはすでに社会実装レベル(TRL9)に達している一方、レーダーや慣性センサは研究室レベル(TRL4)にとどまります。

この差は、転職を考えるうえで実務的な意味を持ちます。社会実装に近い磁気センサ領域では、製品化や量産、ユースケース展開の仕事が生まれやすく、研究段階の領域では基礎研究や要素技術開発が中心になります。同じ「量子センシング」でも、関わる仕事の性質は成熟度によって変わります。なお、量子センサ関連の特許保有数では、日本は米国に次ぐ世界2位です。素材・加工の強みが、この分野での日本の地位を支えています。

「ニーズとシーズのマッチング」に、事業開発の余地がある

ここからは、当社が量子・DeepTech領域の求人を扱う立場からの観察を加えます。資料が挙げる課題には、人材の観点で見逃せないものがあります。

資料は、量子計測・センシング技術のニーズとシーズのマッチングが不十分であり、既存技術に対する優位性の認知度が低く、ユーザー企業の発掘が困難だと指摘しています。これは裏を返せば、「技術はあるが、使いどころを示せる人が足りない」状態だということです。技術そのものを開発する研究者だけでなく、その技術を必要とする産業を見つけ、ユースケースを設計し、ユーザー企業に価値を翻訳して伝える事業開発人材の余地が大きい領域だと読めます。医療、バイオ、自動車、計測標準といった応用先のドメイン知識を持つ人にとって、量子センシングは接点を見つけやすい分野です。

よくある質問(FAQ)

量子センシングとは何ですか?

量子の性質を利用して、これまで測れなかったものや測りにくかったものを高感度・高精度で計測する技術です。ダイヤモンドNV中心、量子慣性センサ、光格子時計、量子もつれ光、超偏極MRIなどに分類されます。

量子センサはもう実用化されていますか?

技術によって異なります。磁気センサはすでに社会実装レベル(TRL9)に達している一方、レーダーや慣性センサは研究室レベル(TRL4)です。固体量子センサや光格子時計の一部は、EV電池モニタリングなどで企業との共同開発が進んでいます。

量子センシングで日本は強いのですか?

量子センサ関連の特許保有数で日本は米国に次ぐ世界2位です。ダイヤモンドなどの量子マテリアルの製造・加工で高い技術力を持つことが、この分野での強みを支えています。

まとめ

量子センシングは、従来技術より高い感度・精度をねらう技術で、応用先が実用に近いことが特徴です。5つの分類で用途と必要環境が分かれ、成熟度は磁気センサのTRL9から慣性センサのTRL4まで幅があります。特許で世界2位という日本の強みは、素材・加工の蓄積に支えられています。そして「ニーズとシーズのマッチング不足」という課題は、事業開発・ユースケース開拓の人材にとって大きな余地を意味します。

次回・第11回は、この量子センシングを支える日本の取組に踏み込みます。Q-LEAPなどの研究ファンディングやQIH拠点、そして相次いで設立されている量子センサ関連スタートアップを見ていきます。

出典・引用元

内閣府「量子エコシステム構築に向けた推進方策」(量子技術イノベーション会議 R7.5.30/内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局 資料4 R8.1.30)

内閣府 > 内閣府共通検索 | 検索キーワード:量子エコシステム

内閣府共通検索で「量子エコシステム」関連資料を見る

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