量子コンピュータの産業応用を推進する株式会社QunaSys(以下、QunaSys)は、マツダ株式会社 技術研究所と進めている共同研究の取り組み内容および今後の展望を公開しました。
両社は、自動車開発におけるシミュレーション技術の更なる高度化を目指し、ゲート型量子コンピュータをCAE(Computer Aided Engineering)およびCFD(Computational Fluid Dynamics:数値流体力学)分野へ活用するための技術検証を行っています。
自動車開発が直面するシミュレーションの課題と量子技術への期待
現代の自動車開発プロセスでは、実車による実験だけでなく、コンピュータ上で流体解析や衝突解析、プレス成型解析などを行う「CAEシミュレーション」が不可欠となっています。設計モデルをシミュレーションで評価・最適化するサイクルを幾度も繰り返すことで、安全性や走行性能、環境性能を高めています。
しかし、近年の製品構造の複雑化や解析モデルの大規模化に伴い、以下のような課題が顕著化しています。
- 計算時間の増大:複雑な解析になるほど計算負荷が高まり、1回のシミュレーションに膨大な時間を要する。
- 探索できる条件の制約:時間の制約から、試行できる設計パターンや条件の数に限界が生じる。
こうした計算限界の突破口として期待されているのが、ゲート型量子コンピュータの活用です。シミュレーション計算そのものを圧倒的に高速化できれば、従来は困難だった大規模・高精度な解析や多様な条件での一括評価が可能となり、自動車の設計・開発プロセスに根本的な変革をもたらすと期待されています。
QunaSys×マツダ技術研究所:共同研究の取り組み
本共同研究では、単に計算結果の出力だけを求めるのではなく、将来的な実用化に向けた「技術基盤づくり」と「知見の蓄積」に主眼が置かれています。
共同研究における主なポイント
- 量子アルゴリズムと実装方法の検討:ゲート型量子コンピュータをCAE・CFDに応用するためのアルゴリズム構築。
- 理論からコードまでのナレッジ共有:QunaSysが教育プログラムや一次元移流方程式を題材とした実装例(ソースコードを含む)を提供。
- 自社独自アルゴリズムへの応用・発展:マツダ側の技術者が自社ノウハウと組み合わせて発展させられる仕組みを構築。
QunaSysとマツダ技術研究所の双方が知見を共有しながら研究を推進することで、自動車産業における量子技術応用の第一歩を着実に踏み出しています。
「日本発・国産量子CAE」がひらく製造業の新たな可能性
QunaSysは、量子コンピュータの発展がこれからのCAEソフトウェアや解析技術のあり方を劇的に変えると捉えています。今後、量子計算基盤が実用化フェーズを迎えるにつれ、従来のCAEツールと量子アルゴリズムを融合させた「全く新しい解析プラットフォーム」が登場すると予想されます。
このような技術転換期において、日本発の技術を用いた「国産量子CAE」や先端ソフトウェアが生まれることは、日本の製造業全体にとっても大きな強みとなります。QunaSysは今後も産業界や学術機関との連携を通じて、量子技術の産業応用と技術開発を推進していく方針です。