富士通株式会社は2026年10月8日、米ニューメキシコ州と「量子コンピューティング研究センター」の設立に向けた協業(MOU締結)を開始したことを発表しました。
ニューメキシコ州が注力する1億5,000万米ドルの量子エコシステム形成構想と、富士通が持つ最先端の量子コンピューティング・HPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング)技術が融合。ハードウェアからアルゴリズム、専門人材育成までを包括的に推進する一大プロジェクトが動き出します。
協業の背景と「量子コンピューティング研究センター」の役割
今回の協業は、米ニューメキシコ州が掲げる「産学官連携による革新的で持続可能な未来の構築」と、富士通のグローバルな量子・コンピューティング戦略が合致したことで実現しました。
新設される研究センターでは、主に以下の3点に重点を置いた活動が展開されます。
- 先端研究開発の推進:量子コンピューティングにおけるハードウェア、ソフトウェア、アルゴリズム、理論にわたる包括的な研究開発。
- 産学官・研究コミュニティの連携強化:産業界、学術機関、政府、研究者の架け橋となり、オープンな量子エコシステムを構築。
- 量子人材の育成・雇用創出:研究協力、インターンシップ、教育プログラムを通じて、次世代の量子エンジニアや研究者を養成。
ニューメキシコ州は関連事業の拡大やエコシステム形成に向けて1億5,000万米ドルの拠出を表明しており、高度専門人材や民間投資の誘致を力強く後押ししています。
サンディア・ロスアラモス・NM大──米国の強力な研究機関との連携
本協業の大きな強みは、ニューメキシコ州内に拠点を置く世界最高峰の科学・学術機関との連携にあります。
富士通は今後、以下の主要機関との共同研究の機会を検討・拡大していく方針です。
- サンディア国立研究所(Sandia National Laboratories)
- ロスアラモス国立研究所(Los Alamos National Laboratory)
- ニューメキシコ大学(University of New Mexico)
- ニューメキシコ州立大学(New Mexico State University)
- クオンタム・ニューメキシコ・インスティチュート(Quantum New Mexico Institute)
なお、ニューメキシコ州立大学とは2025年10月より、富士通の次世代CPU「FUJITSU-MONAKA」およびHPC分野における共同研究をすでに開始しており、今回の協業によってそのシナジーがさらに深まることが期待されます。
「FUJITSU-MONAKA」と量子コンピュータによるハイブリッド環境の検証
実用的な量子ワークロードを処理するためには、単に量子プロセッサを動作させるだけでなく、データ準備、大規模シミュレーション、最適化、制御、エラー緩和、検証といったタスクにおいて、既存の古典的(クラシカル)ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)との高度な連携が不可欠です。
富士通とニューメキシコ州の研究チームは、次世代CPU「FUJITSU-MONAKA」ベースのHPC、AI、量子シミュレーション、および量子コンピューティングを最適に組み合わせた「ハイブリッド環境」の検証を共同で進めます。
ハイブリッド基盤がもたらす応用分野
この統合的アプローチにより、耐障害性量子コンピュータ(FTQC)の実現を見据えた技術進化を加速させ、以下をはじめとする広範な産業分野での実践的アプリケーション開発を目指します。
- 材料科学・新素材開発
- 創薬(ヘルスケア)
- 先進エネルギー・製造技術
- 金融サービス・ポートフォリオ最適化
- 物流・サプライチェーンの最適化
両氏のコメント:ニューメキシコ州知事・富士通CTO

(左からマイケル パディラ上院議員、ロブ ブラック ニューメキシコ州経済開発局 長官、ミシェル ルーハン グリシャム知事、富士通 執行役員副社長 CTO、システムプラットフォーム担当 ヴィヴェック マハジャン、ジョージ ムニョス上院議員)
画像引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000620.000093942.html
ニューメキシコ州 ミシェル・ルーハン・グリシャム知事
「富士通との協業は、ニューメキシコ州として注力してきた量子技術への投資が実を結んでいることを示すものです。また、日本でのトップ会談を通じて目指していたパートナーシップや研究の創出、雇用の拡大について発表できることを嬉しく思います。富士通が有するグローバルな知見と、州内の大学・国立研究所が連携することで、量子イノベーションを支える強力なエコシステムを構築していきます。」
富士通株式会社 執行役員副社長 CTO ヴィヴェック・マハジャン氏
「ニューメキシコ州に量子コンピューティング研究センターを設立することは、富士通の研究活動を拡大し、次世代量子技術の開発を加速するための重要な機会となります。ハードウェア、ソフトウェア、アプリケーションの研究を結集することで、量子システム設計やエンジニアリング検証を推進し、化学や材料科学をはじめとする重要分野で革新的なアルゴリズムを開発していきます。」
まとめ:量子実用化時代に向けた強固な基盤構築へ
今回の富士通と米ニューメキシコ州による提携は、単なる研究拠点の設立にとどまらず、国立研究所や大学を巻き込んだ包括的な量子エコシステムの形成を目指す取り組みです。
次世代CPU「FUJITSU-MONAKA」を活用した古典HPCと量子プロセッサのハイブリッド制御は、今後の量子技術社会実装におけるキーファクターとなるでしょう。Quantum Plusでは、今後も本研究センターの動向や実用アプリケーション開発の進展に注目していきます。